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13.剣山測候所改築工事(1975年)

  • 北岡組今昔物語

一九七五年三月十二日、穴吹測候所に於いて現場説明があり、その日に剣山の頂上迄建設省の人々といっしょに登りました。頂上付近は雪が九十cm位積もっていました。頂上は風があるのでそのわり積もりません。余談ですが、頂上付近の雪は下の雪と違って、水分が少なく軽いので先を歩いている人の足跡があっても風が吹くと見えなくなってしまい、それで高い山では遭難があるそうです。

そして入札があり、工期は三月二十日~九月三十日まで約百九十日でした。それからすぐ索道の段取りにかかり、一日も早く索道を引かないと本工事になりませんので、すぐに一宇の山光林業と契約しましたが、ワイヤの本線が別注とのことです。長さは千二百mでしたが、本線が来て引っ張らないと材料が上がらないし、大変でした。また頂上は国定公園であるので、終点はあらかじめきめられていました。下の規点は営林署の土地を借りて、上下の位置を確認すると、ちょうどその時、県とある業者との間で裁判になっている土地の上を通るようになります。その上に本線を通さないよう三十mは曲げて引かないと物が落ちてもいけないということで、さけて引き完成し、六月十二日に試運転が出来ました。現場で遣方は五月十二日に入れ、起工式は六月十日に行い、いよいよ本工事が始まりました。着工日より実に百日あまりの月日です。

それ迄現場では堀方をしていましたが、何をしても手作業なので岩が出てくるとゲンノウやノミで割って取り、また水槽部分の所には重さが七、八tの岩が出ているし、その岩をとるのに三日もかかり、堀方完了迄に六~七人で八日位かかり、そしてまた十五日おきに提出する出来高報告書も工程表より遅れ、早々よりおしかりをうけるし、場所が場所でも工程表に近く施工をしなければならないし困りました。でも七月二十九日に中国地建の営繕部長及び高松営繕所長他五名で旧測候所で打ち合わせ最中大雨になり、ものすごい雷が鳴り、ストーブの煙突より火花が出て、その場の人々は皆ビックリし、後ろにこける人もいて、こんな場所での工事はなかなか出来ないことがわかってもらえ、それからは大分楽になった気がしました。

基礎も出来上がり、鉄骨も建ち、八月十日に完了し、屋根と壁のイリバンドと言う材料を取り付け中に台風六号が来ました。大雨になるし、風は頂上では那賀郡の方向より風速六十m位で、人が立っていられませんでした。だが屋根を止めていたボルトが仮であったので、せめて軒先は飛ばされないように私が這って上がり、どうにか番線を引っ張りました。今から下山をするといって三人でおりてくる途中、ヒュッテの人に「引き返さなければ帰れない」と言われましたが、上でいればどうなるかわからないので思い切って降りました。道は十cm位の水が流れていて、車ごと流されないか心配でありましたが、どうにか帰ってこられました。それから四、五時間位して山崩れや、道路が決壊し、もう少しで命がない所でした。この台風は八百五十mmの雨でしたので、木屋平・貞光・祖谷の三ヶ所はいつ通れるかわからない状態になり、建設省ももう遅れるのは仕方ないと言う事でした。

頂上は国定公園なので材料を置く場所も、運ぶ通路もあらかじめ決められていました。十一月になると寒い日は夜にお茶を呑んで枕元に置いていて朝になると凍っていました。十二月になると、気温はマイナス五度からマイナス九度になります。一番寒かった十二月十二日には、マイナス十二度になり、測候所の須藤技官が『もうしまわないと、凍傷にかかるでよ』と言って来てくれました。その時は、足や手は痛く、もうやりきれないので、無線で下へ連絡してやめたこともありました。そして工事も全体の九十五%位の出来上がりでしたが、又変更及び追加工事があり、年を過ぎてと言うことで十二月十八日穴吹測候所に於いて落成式が行われ、もうやれやれでした。

年が明けて五月六日より頂上へ登り索道がある内に木屋平村より頂上へ講習便所をするのでやってくれと言われ工事を行いました。鉄筋コンクリート及び壁はCB積みでした。その前より建設省の方から工事が完成しとるので索道を早く取れと指示がありましたが、まだ古材の撤去があるのでその後で撤去しますと言う事で多めに見てくれました。それで七月十五日建設省より係官がこられまして、ようやく最後の完成検査を受け、工事は完了となりました。

この工事で思ったこと、思い出したことをもうすこし書きます。頂上では一番注意しなければならないのは雷です。雷は下の方で鳴っているのですが、頂上では金属関係を持ってはいけないのです。登山者が公衆電話で話し中に雷が鳴り、ひっくりかえった事もありました。それと頂上は気候の変化があるのでモルタルを塗っても三日も四日もかわかないこともありました。霧がいつ発生するかわかりません。他の業者が頂上ヒュッテを建設するのにヘリコプターを使用していましたが、下の方は天候が良いのに頂上は霧がすぐ出てくるので材料を運んできても霧で下が見えないので下ろすこともできないのです。天気ですのに一ヶ月に十八日ぐらいしか運ぶことができません。いつ霧が出てくるかわかりませんので。又測候所の鉄骨の建方中にNHKのヘリコプターが来て撮影をしていましたが、南面は低く飛べるのですが、気圧の関係で北面になると飛べないそうです。それと、工事中に北岡組と関係はなかったことですが、設備屋が雇ったヘリコプターと自衛隊の大きなヘリコプターが、もう少しで頂上で衝突しそうになった事もありました。

(馬場 茂さん 元㈱北岡組 建築部)

 

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